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一般財団法人 ジオ政策研究所 GIO PUBLIC POLICY RESERCH INSTITUTE

セミナーseminar

2013年セミナー

 2013.11.5  2013年度記念講演 佐藤 優 元外交官 「これからの東アジア外交~沖縄・尖閣問題のゆくえ」 RETURN  

11/5 シェラトン都ホテル大阪にて佐藤優さんの記念講演会が開催された。 佐藤優さんの母方が、沖縄出身ということもあり、大阪沖縄県人会の皆様もご
招待。台北経済文化辯事所洪部長、モンゴル総領事チヨナイグランダさん、韓国民団団長鄭鉉権さん、韓国商工会議所会長高英寛さん、日ロ協会理事長藤本
和貴夫さんなど国際交流を支えていただいている皆さんがご参加。
また、前府教育委員長生野照子さん、中国シンクロの母、日本代表元監督井村雅代さんがお忙しい中時間をさいてかけつけていただいた。ありがとうございます。
澤井松原市長、吉村府議会議員、堀口府議会議員、西尾、長野前府議、なると東大阪市議、泉福岡県議会議員、高木ひろし前愛知県議会議員などジオ研究所、西脇代表理事と交遊の深い皆さんからも激励をいただきました。
日頃からご支援をいただいている私学関係の御代表、トラック協会、万代協力会、SPC 関西、歯科医師連盟、大阪リサイクル組合、鶴橋鮮魚卸商組合、育和会、錦秀会、なぎさ会、貴和会、同仁会などの医療法人の御代表の皆様に感謝申し上げます。

 

佐藤優さんの講演要旨をご報告いたします。(事務局の責任でまとめたものです)

○ 今日は、沖縄、また、特定秘密法案をめぐる情勢で、びっくりするようなお話をしたい。
○日本版 NSC を作ろうとしているが、これはなにか?戦前のいわゆる統帥権をもとうとしている。戦争をやるかやらないかを決める機関だ。これにもとづき
国家秘密の法律も作ろうとしている。
憲法 9 条に交戦権は禁止されている。しかし、インド洋で給油をおこない、イラクに派兵している日本は、なし崩し的に集団自衛権が行使されていると見ら
れている。麻生太郎氏は、「ナチスに学ぶ」と発言。橋下氏は、「エンタメの世界ではよくある」とコメントした。ナチスは、ワイマール憲法を改正する必要はないとしていた。アーリア民族の目に見えない憲法は、ヒトラーに体現されるとして、全権委任法、純血法(ニュルンベルク法)など新しい法律を作ってナチスの支配をつくった。日本の現状も、帝国主義にむけた国家再編、なし崩し的な法改正が始まっている。
○ 焦点は、中国の関係。帝国主義のゲームの論理は境界線の引き直し。ロシアのプーチン政権は譲歩してきている。旧ソ連のような力関係ではない。しかし、中国、韓国は相対的に強くなっている。
国家対国家の対立では、民族が出てくる。民族がつくられる時は、敵が必要になる。日本人は千数百年前からいて、ロシアも千年くらい前からいると言う感
覚をもっているが、学問的にはこれは否定されている。民族は、フランス革命からたかだか230年くらいの概念。八重の桜がテレビで放映されたが、戊辰
戦争のころ会津藩と長州藩が同じ民族とはおもっていなかった。
チエコ人が作られる時にはドイツ人、ポーランド人ができる時はロシア人、アイルランド人ができる時はイギリス人、戦争で敵対した国との関係で作られ
る。あんなひどい事をした奴と、負の感情でまとまる。そういう意味では中国と、尖閣が小康状態で落ち着いたとしても、中国は本格的な産業化の過程であ
り、民族主義が靖国の戦犯の合祀問題、教科書問題と出てくる背景がある。こういう関係の時に、我々が学ばないといけないのは、アイルランドとイギリス
の関係。国家の関係はよくないが、婚姻関係、経済活動、ビートルズは全員が在英アイルランド人だ。国家の枠をこえた交流関係があると、国の関係が悪く 3なっても草の根で守って行ける。西脇理事長が多文化共生をめざして仕事をされているのは、非常に大切なこと。

○ 尖閣の問題について言うと、日本政府も最初は関心がなかった。北京政府も同じ。
戦争中、尊敬する沖縄で最初の芥川 川賞作家の大城立裕(おおしろたつひろ)先生は、上海の東亜同文書院大学で勉強した、そこの教科書に書いてあるのは、失われた領土—琉球と蒙古とかかれてあった。琉球王国と領土の歴史を一番研究しているのは台湾。北京は、それを追いかけている感じ。
外務省の HP には、尖閣は歴史的にわが国の領土で、1895 年閣議決定をした、10 年間どこの島でもないと調べていたとでている。
しかし、この決定は秘密閣議であり、公表したのは、1952 年。当時は帝国主義時代、列強に邪魔されたくないので、秘密にしていた。これだけでは、いつ公知の事実になったのかと反論される。こんな不利な主張をやるのは、外務官僚の体力の劣化。私なら 1970年代までに中国の領有権の主張がなかったと繰り返す。淡々とこれを繰り返せば良い。最近外務省が竹島問題、尖閣問題について HP で発表した。北方領土はなぜか触れていない。
領土問題で大事なのは、争っている両方の国が問題であると認めないといけない。例えば日本共産党は、4 島だけでなくウルップ島から含む 22 島の返還を主
張している。
しかし、日本政府は、国後、択捉、歯舞、色丹 4 島以外を主張していないので、千島列島にロシアとの領土問題は存在しない。韓国の慶尚南道
の人たちには、対馬の領有を主張する声もある、しかし、韓国は主張していないので、存在しない。
一方のみが主張する場合はどうなるのか?外交の場合は、実効支配するという現実が優先。領土問題があると認めたら何らかの妥協をしないといけないのが
外交のルール。韓国を攻める論理は、客観的に見て存在する、国際司法裁判所で議論しましょうといっている。今回の外務省の HP のビデオは、釈明する行
為が、尖閣に領土問題があると認めてしまっていることになる。
固有の領土という主張も分が良くない。1871 年清国と結んだ日清修好協定を日本に有利に改訂する際に、宮古島、石垣島、西表島、与那国島をあげますとい
うのが、1890 年分島増約。さすがに当時の李鴻章は批准しなかったが、お互いにサインまでしている。その後日清戦争になった。
こういう事を言うのは、日本のウイークポイントをあえて指摘して、国際社会のなかで、うまく折り合いを付けていく方策をいっている。

○このような状況で外交的に大切なのは、韓国。韓国もロシアも台湾も民主主義国。中国指導部は、選挙の信任を一切うけていない。連携が大事だが、朴槿
恵大統領は、今日本との交渉は意味がないとしている。こうなると中国との交渉が先になり、アメリカとの関係がおかしくなる。韓国との関係も、慰安婦問
題は必ずしも解決していない点があるが、徴用工問題は政府間で解決しているとしてきた。
ここにきて徴用工の問題で賠償請求権を最高裁が認める判決をだし、解決したとする政府の立場と異なる対応がでてきた。民間なら保証期限が過ぎた製品の保証は企業判断。
外交も同じ。慰安婦問題も徴用工も政治的判断で人道的支援を、国家が対応すべきだ。慰安婦の問題は、存命の方が少ない中で対応しなければ恨(はん)として永遠に残る。それは、アメリカのイメージもよくする、アメリカ人ヨーロッパ人は今起きるレイプの問題として慰安婦問題をとらえている。

○そこで見ないといけないのが沖縄。母方が沖縄で利害関係者ですが、突き放してインテリジェンスの立場からみたい。
ロシアの民族問題をバルト三国、チエチェンの問題を見て来た。いまベルギーの問題に注目。北部のオランダ語の人たちが、ベルギー国王が変われば分離独
立するかもしれない状態にある。沖縄の明日かもしれないと注目している。
今の天皇皇后は琉歌を詠まれる。琉歌は 3:8:6:8:8:8:6 の別のリズムになっている。季語もない、特別な勉強をしないと詠めない。今の皇室は沖縄を統合する
には琉歌も必要だとの感覚がおありになるからだ。この感覚が次の代に続くのか。来年、名護市長選終わると、辺野古の基地問題が焦点になる。ピケがはられおじいちゃんおばあちゃんが入ってくる。流血が起きれば島ぐるみ闘争になる。
反基地闘争は、革新がやっていると思っているが、0.6%の面積に 74%の米軍基地がある事への反発、保守陣営のマグマが、政治的差別をこれ以上許さない反差別闘争になっている。基地経済は実際 5.1%、観光の半分以下になっている。
他の県が海兵隊を受け入れないのは民意が反対しているといわれた。沖縄の民意も反対している。もともと日本の施政権外の沖縄に岐阜、山梨から海兵隊が
来た歴史もある。沖縄も都道府県の一つなのに、外務省の大使が沖縄にいる。
オスプレイも沖縄にだけくる。差別の問題として火が着いている。銃剣とブル 5ドーザーで民意を踏みにじると、沖縄の独立、連邦化が起こるかもしれない。
9 月 18 日の記事では琉球語を公用語にしていこうとの動きがはじまった。このような状況で、沖縄の統合を守って行く事はとても大切になっている。

○1854 年日米和親条約が結ばれた。その後、琉球王国に、ペリーが立寄り、琉球修好条約が結ばれた。続くフランス、1858 年オランダという列強と条約を結んだ歴史がある。この資料は港区麻布台の外交資料館にある。1879 年琉球藩をとりつぶして琉球王を日本につれて来た時にこの資料も来ている。この歴史的な過程を読み解いて、独立国として国連加盟をすれば独立する可能性がある。
立命館大学松島さんは、琉球自治学会をつくり独立志向の訴えをしている。私はこの動きには批判的だ。沖縄タイムズは1週間に一度、沖縄方言のページを
つくっている。 、、、、これくらい方言と日本語の違いがある。
軍があると独立言語、軍がないと方言という学者もいる。国連で 140 万人以下の独立国は 44 カ国ある。島国が多い。大阪、兵庫、神奈川、あるいは中南米の沖縄出身者の考え方が大きく影響をする。

○もう一つ移民が待ったなしでやってくる。移民は受け入れが、ゲームのルールを作る。人口学者エマニュエルトットは家族のタイプで考え方の違いがでる。
たまたまパリの盆地でフランス革命が起こり兄弟は平等の思想が世界に広まった。しかし、ドイツ、日本は長子相続で生まれながらにちがうと教えられた。
イギリスは中間の遺言で特定の子どもに多くできる、アメリカは白人プロテスタントの中では平等主義、黒人、ヒスパニックは蚊帳の外におかれてきた。オ
バマ調子が悪そうとの見方が多いが、すでに非白人の人口は 37%、2050 年に逆転する、このままの政策では共和党は政権をとれない。
フランスは、第2世代で言葉ができると第3世代で完全に認められる。サルコジはハンガリーからの移民。イギリスはアイデンティティ守っていいよというが、仲間入りさせない。経済状態が悪くなると、ジャマイカ系の移民と軋轢が起こる。

○日本も TPP の次には必ず移民が来る。移民受け入れないと今の生活水準が維持できないのはあきらか。このような中で、異質な人の受け入れ、沖縄、在日
韓国朝鮮人、在日中国人といわれるみなさんの問題、多文化共生を仕事とするジオ研究所の西脇理事長の活動は大切。また、ティグレが経済人の活動を支え
ることも重要となる。

○北方領土問題も 11 月1−2日とはじめて岸田外務大臣、小野寺防衛大臣とロ シアの防衛大臣外務大臣が話をして、今後の交渉を進めて行く雰囲気が出て来た。しかし、帝国主義的な力と力の関係だけで動かそうとするのも限度がある。
先住民族の地である北方領土という考え方、アイヌ(ウタリ)民族の権利回復も位置づけて、国際優位性も高まってくると思う。
国家を強くするには回り道が必要だ。仲間を助け合う、社会が国家を強化していく、ジオ研究所がされているような地域を基盤に活動される事が重要。

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