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一般財団法人 ジオ政策研究所 GIO PUBLIC POLICY RESERCH INSTITUTE

セミナーseminar

2012年セミナー

 2012.10.1  2012年度記念講演 高橋洋一氏が語る「消費税反対〜私が述べた10大理由〜。」 RETURN  
   
   

西脇くにおが理事長を務めるジオ政策研究所は、大阪市中央区谷町2丁目、ティグレ大阪と同じ谷町ビル8Fに事務所を移し、スマートな社会の確立へむけた政策提言を行なっている。
 10月1日には、記念講演会と懇親パーティがホテル日航大阪で開かれた。
1部の記念講演会の講師は、嘉悦大学教授の高橋洋一さん。西脇理事長から東大の数学科卒業、ブリンストン大学でバーナンキ教授に師事、元財務省で国債発行の責任者として、また、小泉内閣、安倍内閣で経済財政担当の補佐官として活躍された経歴を紹介。
「マンデルフレミング理論を勉強して、変動相場制のもとでは、公共事業などの財政政策より、マクロの金融政策の方が効果的だと学んだ。岩田規久夫、野口旭先生に続くのが高橋洋一さん」「なぜこの時期に消費税増税なのか?よく考える講演会にしたい」と開会のあいさつがあった。
 高橋洋一さんは、消費税は徴税コストの低い、とりっぱぐれの少ない税といういい面をもっている。しかし、公約にもない、また、デフレ経済のもとで増税するのはおかしいと政府の公聴会で消費税増税の反対の理由を述べた。
 マスコミも利害関係者なので反対しない、大学の先生も言わない、民主党の野田首相は財務省の原稿を読むだけになっている。と冒頭から厳しい指摘。そして、

(1)消費税を目的税にしている国はない。(8P)

 消費税を目的税にしている国はないというのが第一の理由。財務省は海外の事例で国民を説得する事が多いが、税制調査会の報告書に目的税の国はないと書いてある。社会保障は負担と給付の関係が明確でないと制度がなりたたない。
貧困層の対策を考えるなら、所得税の配分でおこなうべきで、給付付き税額控除などの政策がある。
 目的税化を言うまえに消費税の地方税化をいうべき。現在も5%のうち1%は地方消費税として自治体の財源になっている。なぜ国に吸い上げてから地方に配分するのか。景気に左右されてはいけないサービスを担っている自治体の財源にしたほうがよい。地方交付税を廃止して、消費税の地産地消を提唱したい。困るのは財務省と、総務省だけ。財務省出身の国会議員などが、ヨーロッパのように国境での調整が必要などと、できない理由を代弁している。いまでも、地方消費税は、府県ごとの商業統計などをベースにアバウトで配分している。全国知事会に地方交付税の担当者4〜5人置けば配分もできる。
事実カナダは、州税で地方ごとに税率も違う。
こうすれば補助金の陳情を府県がやめて、究極は自治体が税率を決めるところにまで行き着く。首長のマネジメントがもとめられ、住民との関係も大きく変わる。  医療も病気のかかる種類や傾向などの地域差が大きいので全国一律ではなく、将来の道州制のもとで保険運営を検討した方が良いと思う。

(2)不公平税制、穴の開いたバケツ状態の徴収体制をまずあらためるべき(6-7P)

 保険料で10兆円、消費税で3兆円、クロヨンで5兆円といわれる未徴収がある。
社会保険料も本来国税と同じ国税徴収法の対象で、強制措置が可能だがしていないだけ。国税調査は法人に対して定期的にあるが社会保険の調査がない。国税庁には源泉徴収をしている企業の300万件のデーターがあるが、社会保険庁は、200万件しかもっていない。このような問題が消えた年金事件につながったといえる。実は厚生年金を引かれているのに企業が納めていない例が多々あった。
 アメリカでは企業と労働者の双方に保険料納付の領収書を発行している。
また、確定申告で日本では自分の番号を書かないが、アメリカでは、生活するうえで最初にSSNという社会保障番号を申請する。この番号がないと運転免許も口座開設もクレジットカードの発行もできない。番号で銀行に照会をかけるので脱税しにくい仕組みができあがっている。このような考え方で、税や保険料の徴収をすすめる歳入庁を提案しているが、税率上げる議論の前に、歳入庁をつくるべき。

(3) 国の財政がもたない、財政赤字が深刻なので増税すべきは本当か?

関西に来るとニュースキャスターの○○坊などが財政は大変だと言いまくっている。そこで考えてほしいが、増税と増収は違うということ。商品の値段を上げたら儲けが増えるのなら苦労しない。単価上げれば売り上げが減るというのが商売の常識。税収を増やすには名目成長をあげないといけない。(3P)
 財政赤字で1000兆円も借金がある。しかし、資産も650兆円ある。(10P)国の財政がもたないとは、国債が暴落してデフォルト状態になる、それが、財政破綻と考えられる。日本の財政状態を市場がどう見ているか?という指標にCDSという国債の保険がある。ポルトガルが5%、イタリアが3.6%、ギリシアは計算不能(120年に10回は破綻している)、日本は0.8%=100年に一度しか破綻しない確率と市場が評価している。(4P)格付け会社はいいかげんだが、CDSの保険の方は身銭を切っているので評価は真剣。これが国際的なマーケットの意見だ。
テレビで討論していて、「いつ頃破綻しますか?」と聞くと「3年後に破綻」という人がいたので、「3年の保険料で全額保証されれば、あなた大もうけできますよ。」と言っておいた。
いつ頃危機になるか?誰も明確に答えない、マーケットの意見をきかない財政が危ない説にまどわされてはいけない。

(4) マネー供給を増やして名目4〜5%の経済成長を行なう事が重要

 GDPに対するマネーの伸び率をグラフにした。(2P)日銀、財務省は相当なマネーを供給していると言っているが、アメリカに比べると低い。フリードマンはヘリコプターマネーと言ったが、資本主義はマネーに魔力があることをこう述べた。
 小泉、安倍内閣ではGDPの名目成長率を4〜5%に保つために、お金を刷ってマネー供給を増やし、1ドル120円を維持していた。(25P26P)小泉、安倍内閣の時が経済パフォーマンスが失われた20年のなかでは、一番良かったと評価している。
 対ドルに対して、円の希少性で円高円安は決まる。マネー供給を増やして円安誘導、輸出産業の成長促し、増収につなげることが経済政策として重要だ。

と主な4つの点を講演で話された。

1部の閉会として、ティグレ代表小林社長が「この時期に勇気ある講演を聞かせていただいた。ティグレ会員の70%が反対。また、来年に期限が切れる金融モラトリアム法の後の対策も進めていきたい。」とあいさつをおこなった。
2部は、役員紹介と西脇理事長からのお願い。来賓を代表して大谷信盛、辻恵衆議院議員から激励のあいさつの後、日本中小ホテル協同組合理事長金沢孝晃さんの乾杯で懇親を深めた。中締めは、かおりちゃんでおなじみの宇治森徳重田社長が、万代協力会を代表してご挨拶のうえ閉会した。

※( )の数字は、PDF資料のページ

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